オフィスは「働く場所」から「発想が生まれるリビング」へ
株式会社吉武工務店は、東大阪を拠点にオフィス改修や住宅建築、古民家再生まで手掛ける少数精鋭の工務店です。2代目・吉田丈彦社長は、「空間を変えれば会社が変わる」という発想から、自社オフィスを丸ごとモデルルーム化。ビニールクロスと蛍光灯の“普通の事務所”を、木質感とオレンジ色のあたたかな光に包まれた空間へと再生しました。
単なる内装リフォームではなく、「社員のパフォーマンスを最大化する環境づくり」への投資として捉えた点が特徴です。結果として、社員のモチベーション向上や来社した顧客からの信頼感アップにつながり、業績改善の起点ともなりました。建築会社だからこそ、自らの空間を“ショールーム兼実験場”として見せられる好例と言えます。
淡路島から御杖村へ──古民家再生が生む社会的インパクト
オフィス再生の延長線上にあるのが、古民家を活用した「Yoshitake村御杖」プロジェクトです。きっかけは、2018年に淡路島で入手した古民家を自社保養所として改修したこと。木を生かした空間づくりのノウハウを活かしながら工事を進めましたが、数年後には社員の利用頻度が低下し、売却を決断します。
ところが、この物件が田舎暮らし紹介番組で取り上げられ、問い合わせが殺到。古民家・田舎暮らしへの潜在ニーズの大きさを実感した吉田社長は、次の舞台として奈良県御杖村の古民家を取得し、「Yoshitake村御杖」として再生しました。ここは企業保養所であり、モデルハウスであり、セミナールームでもあります。
過疎化が進み人口約1500人の御杖村では、空き家の増加が大きな課題です。吉武工務店は構造見学会や古民家相談会、田舎暮らしサポートを通じて、これまで200人ほどを現地に案内。そのうち数組が移住や店舗開業を決断し、村主催イベントとの連携も進んでいます。建築会社の仕事が「地域の関係人口を増やすインフラづくり」にまで広がっている事例です。
施工だけでは終わらない、建築の仕事プロセス
吉武工務店の特徴は、「お客様の働き方・暮らし方・地域課題」まで踏み込んで提案する点にあります。オフィス改修であれば、レイアウトや仕上げ材の話だけでなく、
- その会社は何を大切にしているのか
- どんなコミュニケーションが生まれてほしいのか
- 採用・ブランディングにどう効かせたいのか
といった経営課題からヒアリングを行います。古民家再生では、
- 週末だけの田舎暮らしなのか、いずれ移住を見据えるのか
- 10年後に年齢や生活がどう変化しているか
- 村全体の空き家活用とどう連動させるか
までを一緒に考えます。「終の棲家ではなく、これからの10年を楽しむ家にしましょう」といった提案も、その一部です。
若手が関われる役割と、現場見学で見るべきポイント
少人数の工務店である吉武工務店では、若手も早い段階からプロジェクトの複数工程に関わります。具体的には、
- 現場調査の同行・採寸、既存建物の癖を学ぶ
- 図面やパース作成を通じたプランニング補助
- 見学会・セミナー運営のサポート、来場者対応
- SNSやウェブでの施工事例紹介
といった役割が想定されます。現場見学の際は、「仕上がりのきれいさ」だけでなく、動線計画や光の入り方、素材の選び方、そして施主がその空間でどう過ごしているかまで観察すると、仕事理解が一気に深まります。
この仕事に向いている人のチェックポイント
建築業界、とくに吉武工務店のような空間づくりに強みを持つ工務店に向いているのは、次のような志向を持つ人です。
- 間取り図やインテリアを見ると時間を忘れる
- 「人が集まる場」を企画するのが好き
- 地域やまちづくりのニュースに自然と目が行く
- お客様とじっくり話をしながら形にしていく仕事がしたい
- 同じ場所を「どう変えればもっと良くなるか」を考える癖がある
これらにいくつも当てはまるなら、「空間で会社と地域を変える」タイプの建築・工務店の仕事は、やりがいを感じやすい分野だと言えます。
業界研究・志望動機につなげる視点
建築業界の企業研究では、単に施工実績の数や規模を見るのではなく、「どんな課題を、どんな空間づくりで解決してきたか」に注目すると特徴が見えます。吉武工務店の例でいえば、
- オフィス改修で社員の働き方や業績にどう貢献したか
- 古民家再生で地域の人口減少や空き家問題にどう向き合っているか
といった点が志望動機のヒントになります。「空間が変われば、人の行動や地域の未来まで変わる。そのプロセスに建築のプロとして関わりたい」という軸を、自分の言葉で語れるかどうかが、面接で問われるポイントになるでしょう。