東大阪の「町の工務店」が、60年続く理由
大阪府東大阪市で1965年に創業した株式会社吉武工務店。社員9名という小さな組織ながら、オフィス改修から住宅、古民家再生まで幅広く手掛けてきました。二代目社長・吉田丈彦氏が受け継いだのは、「心を込めた建築を贈ります」という創業時からの思いと、自社大工による“顔の見える施工”です。
父親である先代は町工場やオフィス、住宅の工事を通じて、地域の中小企業や住まいの相談役として信頼を築いてきました。そのバトンを引き継いだ吉田氏は、単なる営繕や修理にとどまらず、「未来につながるプラスアルファの価値」を提供する工務店としての道を選びます。
自社大工にこだわる理由――「設計・施工・アフター」まで一気通貫
吉武工務店の強みは、自社の大工棟梁を中心にした施工体制です。設計から施工、引き渡し後のアフターフォローまで、基本的に自社の担当者が一貫して対応します。
図面上の打ち合わせだけでなく、現場でお客様と顔を合わせながら、「ここはもう少し木を見せたい」「照明の光を柔らかくしたい」といった細かな相談を重ねていく。この積み重ねが、既製品では出せない“その人らしい空間”を生み出します。
「夢の空間づくりを一緒にやりましょう」という代表メッセージは、こうした関わり方から生まれた言葉です。
業績をV字回復させた“オフィスリノベーション”の発想転換
一時期、同社は厳しい赤字に直面しました。そこで吉田氏が着目したのが、「働く空間そのものを変える」という発想です。2010年、自社オフィスを全面的にリノベーションし、モデルルームとして一般公開しました。
ビニールクロスと蛍光灯の事務所を、無垢材とオレンジ色の照明で包まれた“リビングのようなオフィス”へ。社員の居場所を整え、打ち合わせスペースも「お客様を招きたくなる空間」に変えたことで、社内のモチベーションと来客数が同時に向上。結果として、売上と利益も改善していきました。
「機械には投資するのに、人が働く空間には投資しない会社が多い。社員のパフォーマンスを最大限にするのは、まず“場づくり”から」というのが吉田氏の考えです。
古民家再生で見えてきた、中小企業ならではの新しい価値
オフィスリノベーションの成功をきっかけに、2018年には淡路島で古民家を取得し、自社保養所兼モデルハウスとして再生。テレビ番組で紹介されるほどの反響を呼び、売却後は奈良県御杖村で「Yoshitake村御杖」プロジェクトが始まりました。
ここでは企業保養所、モデルハウス、セミナールームとして活用しながら、構造見学会や田舎暮らし相談、古民家リフォームの無料相談会を開催。すでに数組の契約にもつながり、村の空き家活用や関係人口の増加にも貢献しています。
事業全体の1割程度の売上規模ながら、「吉武工務店なら木と古民家に強い」というブランドイメージをつくり、主力のオフィス・住宅分野にも良い影響を与えています。
小さな工務店で働くメリットチェックリスト
記事の内容を踏まえ、「少数精鋭の工務店で働くメリット」を整理すると、次のようになります。
- 設計・施工・お客様対応まで、一連のプロセスに早い段階から関われる
- 自社大工として技術を深めながら、「提案力」も同時に身につけられる
- オフィスや古民家など、多様な用途・規模の木造建築に携われる
- 経営者との距離が近く、会社の方針や数字を肌で感じながら成長できる
- オレンジ色の照明に象徴されるような、温かい職場空間で働ける
面接前に見ておきたい「施工実績」のポイント
工務店を比較するなら、ホームページの施工事例を見るのが近道です。吉武工務店のような中小工務店を見る際は、次の点をチェックすると、その会社の「顔」が見えてきます。
- オフィス・住宅・古民家など、得意としている建物のジャンル
- 木の使い方や照明計画など、「空間の雰囲気」を左右する要素へのこだわり
- ビフォーアフター写真から伝わる、課題解決のストーリー
- お客様の声に、担当者や大工の名前が具体的に登場しているか
面接で質問するなら、「自社大工としてどこまで任せてもらえますか」「オフィスや古民家など、印象的だった案件はどれですか」など、実際のプロジェクトを軸に聞いてみると、その会社のリアルな姿が見えてきます。
“リビングのような職場”から生まれる、これからの建築
ロゴマークのオレンジ色には、「笑いが絶えないリビングのような場所をつくりたい」という思いと、「心を込めた建築」を象徴するハートが込められています。働く人が安心して力を発揮できる場を整え、そのエネルギーをお客様の空間づくりへ還元していく――。
大手ではなく、小さな工務店だからこそできる、顔の見えるものづくりと、社員一人ひとりへの丁寧な向き合い方。その積み重ねが、創業60年を迎えた吉武工務店の“オンリーワン経営”を形づくっています。