籐家具から始まった、富田林の小さな工房
1927年、大阪・富田林でカナタ製作所の歴史は籐家具づくりからスタートしました。戦前戦後の暮らしの中で、籐は「軽くて丈夫、そしてどこか温かい」身近な素材。大量生産の工場ではなく、目の前のお客さまの暮らしを思い浮かべながら一つひとつ編み上げる、そんな手仕事が原点です。
高度経済成長の波に乗るよりも、「長く使われるものを、実直につくる」姿勢を貫いてきた結果、華やかなスポットライトからは少し離れつつも、地元で quietly 信頼を積み重ねる工房として歩みを続けてきました。
戦闘機の椅子から座椅子へ。転換期がくれた学び
時代の変化とともに、カナタ製作所は籐家具だけでなく、戦闘機のシート製作など特殊な注文にも応えていきます。求められるのは、過酷な環境に耐える「安心・安全」と「正確さ」。ここで培われたのが、図面通りに作るだけでなく、見えない部分まで責任を持つ設計・製造の姿勢です。
その後、暮らしが和室中心から洋室へ移ろう中で、座椅子の製作にも着手。日本人の生活様式の変化を肌で感じながら、「座る人の体重のかかり方」「床との相性」といった細部にまで意識を向けるものづくりへと進化していきました。
「自分たちで作り、届けたい」SWITCH誕生の背景
受注品をつくる日々の中で、「もっと暮らしを楽しく豊かに変える家具を、自分たちの名前で届けたい」という思いがふくらみます。
・大量生産・低価格競争には踏み込まない
・自分たちが本当に欲しいと思える家具だけをつくる
・感性の合う人に届けばそれでいい
こうした決意から生まれたのが、オリジナルブランド「SWITCH」です。社長や専務が「こんなものがあったらいい」と考え、図面を引き、試作を重ねる。作り手の欲求から始まるブランドとして、既成の枠にとらわれない家具づくりがスタートしました。
素材への徹底したこだわりと、あえて残す“ゆらぎ”
SWITCHの家具は、まず素材選びから妥協しません。生地には児島デニム、オイルレザー、倉敷帆布など、使い込むほど味が出るものを厳選。木部にはホワイトオークやウォールナットを採用し、節やひび割れといった「個性」をあえて隠さず生かします。
スピードや歩留まりだけを追うなら、もっと効率的な選択肢もあります。それでも、「自然素材ならではの表情こそが暮らしを面白くする」と信じ、あたたかみのある“ゆらぎ”を残す。ここに、カナタ製作所らしい実直さが表れています。
受注生産・自社一貫製造で守る、実直なものづくり
カナタ製作所があえて大量生産に進まないのは、「顔の見える品質」を守るためです。ソファの座り心地を左右で変える、チェアにキャスターを付ける、お客さまの手描きイラストを形にする──こうした細かな要望に応えられるのは、受注生産と自社一貫製造があるからこそ。
社外デザイナーや設計士とも連携しながらも、安易に外注に頼らない。図面、木工、張り、仕上げまでのほぼすべてを自社で行うことで、「誰が、どのように作ったか」がきちんとたどれる体制を維持しています。
今も続く「小さなこだわり」と、つくり手の仕事
工場では、目立たないところにこそこだわりが宿ります。たとえば、
・ソファのクッションの中材の配合を数%単位で調整する
・張り替えや修理を想定し、分解しやすい構造にしておく
・木目の流れが美しくつながるよう、部材を慎重に配置する
といった工夫です。
商品開発、SNSでの発信、イベント企画まで、現場のメンバーが「どう伝えれば、良さがちゃんと届くか」を考えながら動くのも特色です。モノを作って終わりではなく、「売り手の目線」も持ちながら、ブランドの次の100年を現場から形づくっています。