「売れ筋」より「自分たちがいいと思うもの」をつくる
大阪・富田林で1927年に創業した株式会社カナタ製作所は、オリジナル家具ブランド「SWITCH」を展開する家具メーカーです。大量生産・低価格が当たり前になった今でも、同社はあえてトレンドや価格競争に流されすぎず、「自分たちが本当に良いと思えるものをつくる」姿勢を貫いています。
社内に専任デザイナーはおらず、新製品は社長や専務の「こんな家具をつくりたい」という思いからスタート。図面を引き、試作を重ね、展示会での反応を見て定番化していくスタイルです。市場調査よりも、自分たちの感性とユーザーのリアルな反応を重視する。この距離感が、「知る人ぞ知る」ブランドを支えています。
職人の仕事:素材に向き合い、時間をかけて仕上げる
SWITCHの家具づくりの中心にいるのは、木工・張り地・仕上げを行う職人たちです。良質な児島デニムやオイルレザー、倉敷帆布、ホワイトオークやウォールナットなどを使い、節やひび割れといった「素材の個性」をあえて残しながら加工していきます。
特徴的なのは、スピードや効率だけを追わないこと。一つひとつ手作業で、時間と手間を惜しまない姿勢を大事にしています。ソファ一台でも、座り心地の微調整、縫製のライン、木部の触り心地など、細部に判断と工夫の余地がある仕事です。
未経験からでもスタートできるのは、いわゆる「伝統工芸の名人技」でなければ成り立たない仕事ではないからです。基礎からコツコツ積み上げていけば担当できる領域が広がっていき、「自分の手がけた家具が世の中に出ていく」実感を得やすい環境です。
営業・企画の仕事:つくり手とお客様をつなぐ役割
家具メーカーの営業は、単に受注を取るだけではありません。カナタ製作所では、提携家具店への製品提案や展示会運営はもちろん、ユーザーの声を開発にフィードバックする役割も担います。
SWITCHの家具は受注生産が基本で、在庫を大量に抱えない代わりに、一件一件のオーダー内容が濃いのが特徴です。「片側だけ硬めの座り心地にしたい」「このチェアにキャスターをつけたい」など、細かなカスタム要望をどう形にするか、職人と相談しながら設計していきます。
「売れるものを売る」というより、お客様の暮らしとブランドの世界観をどう重ね合わせるかを考える仕事。つくり手のこだわりを理解しながら、お客様にとっての価値として言語化できる人が活躍しやすいポジションです。
デザイン現場:社内外のメンバーと新しい可能性に挑戦
社内専任デザイナーがいない一方で、カナタ製作所は社外デザイナーや設計士とも積極的に連携し、「メーカーだけではできないモノづくり」に取り組んでいます。社内の企画・営業・職人と外部のクリエイターが混ざり合いながら、新たなラインナップを生み出しています。
プロダクトデザインだけでなく、ブランドの世界観を伝える写真やSNS発信も重要なクリエイティブ領域です。素材や構造を理解しつつ、「どう見せれば、この家具の良さが伝わるか」を考える人にとって、現場は大きな学びの場になります。
未経験からのキャリアパスと成長イメージ
未経験で入社した場合、多くは製造現場でのサポートや簡単な工程からスタートします。木材の加工補助、張り地の準備、検品などを通じて素材や道具に慣れていき、先輩職人のもとで徐々に担当範囲を広げていきます。
数年かけて一連の工程を任されるようになると、「この仕様ならこういう構造にした方が長く使える」「この張り生地にはこういう仕上げが合う」といった提案もできるようになります。そこから、展示会への同行や新製品の試作意見、撮影やSNS発信への関わりなど、つくるだけでなく「伝える側」にもフィールドを広げていくケースもあります。
カナタ製作所が大事にしているのは、派手な才能よりも「実直なものづくり」ができるかどうか。流行に振り回されすぎず、自分たちの信じる価値を丁寧に届けていく姿勢が、キャリアの軸になります。
「自分らしさ」を仕事に重ねるという選択
家具業界で「やりがい」と「自分らしさ」を両立する鍵は、自分がどんな価値観でモノや暮らしを見ているかを自覚し、それを大切にしている現場を選ぶことです。クラフトマンシップを大切にしながら、デザインや発信にも関われる環境は、自分の感性を仕事に生かしたい人にとって、長く付き合えるフィールドになり得ます。
自分が毎日触れる道具や家具に目を向け、「なぜこれが好きなのか」「どんな暮らしを良いと感じるのか」を一度掘り下げてみる。そこから、自分らしく働ける家具業界でのキャリアが見えてきます。